物語22 クリスマスといえば 


 クリスマスが近づきました。
 また、イルミネーションの季節です。
 去年はさらっと流してしまったので、今年は少し長めに歩きまわりました。
 カイくんも、興味を持ってくれたみたいで。
 きれいね、きれいだね、を二人で何回も言いました。
 すっごく寒くて、カイくんのポケットに手を入れて何度も温めてもらいました。
「なんでカイくん、そんなにあったかいの?」
 筋肉量の差か?
 これまでカイくんに時々言われていました。
「あきちゃん、体が冷たすぎ。」
 最近では、
「あんまり冷えなくなったね。触ってもあったかいこと、多いよ。
 健康になってきた証拠だって。
 よかった。」
 と言われていました。
 でも、長時間、屋外にいるのはさすがに…。
 その点、カイくんはいつでもどこでもあったかい。
「手があったかい人は、心が冷たいんだよ。」
 自分で言うなって。
 そんなこと、ぜんぜん当てはまらないよ、カイくん。

 ちょっと変わったことをしたくて、近くのビルの上から見てみよう、と。
 ところがそう考える人は多くいるみたいで、人だかりが。
 心配してカイくんのほうを見ると、やっぱりちょとむすっとしてます。
 あちゃ。人ごみ嫌いだからなー。
「帰る?」
「あきちゃん、見たいでしょ。」
 うん、見たい。
 またも、心の中でカイくん、ごめんねと言いながら。
 窓ガラス越しにじっくり見ることができました。
 すぐ背後にカイくんがいました。
 ガラスに二人のシルエットができていました。
 なんか、幸せ。


 このころには、カイくんがときどき、うちに泊まるようになっていました。
「うちも、だんだん許してもらえるようになったから。」
 と、カイくんが言っていました。
 前には、たしか、家に他に男手がなくて危ないから…とか、聞いた気もする。
「おうち、大丈夫なの?」と聞くと、
「大丈夫。」と。
 なにが変わったんだろう?
 お母さんが、落ち着いてきたのかな。
 よくは分かりませんでしたが、だんだん、うちに泊まる頻度が増えていきました。
 私の心理状況も安定してきました。
 さびしい病から一人で徘徊することもなく。
 会いたいと泣いて訴えることもなくなりました。
 でも、カイくんはふたつの家の間で、大変だったかもしれません。
 私VSお母さんてとこでしょうか。
 カイくん自身が文句を言っていたのは、一つも聞いたことがありませんが。
 私なら、同じ立場なら、きっと苦労してる。



 お正月は、それぞれの実家で迎えました。
 私は自分の家族と旅行に。
 今思えば、このときが一番の話しどきだったかも知れません。
 父も安定していました。
 会ってほしい人がいる、と切り出したら、スムーズに段取りはできたかも。
 その後の結末は分かりませんが。

 幸せを、長引かせていました。
 いま、幸せだから。
 何の変化もなくていい。
 そんな気持ちで私はいました。
 あとは、自分の仕事を何とかするだけ。
 やっと、月給になり、保険もつきました。税金もいっちょまえに引かれました。
 仕事さえ、何とかなったら。
 アルバイトは脱しましたが、極小企業、しかも斜陽産業といわれている業界。
 月給と言えども、ワーキングプアすれすれなのです。
 いや、そのものかも知れない。
 貧しく美しく、とは言ってられません。
 人生が進めば、お金が必要になります。
 せめて、一人で子どもが育てられるくらいでなければ、結婚してはいけない。
 それが私の指標でした。
 強くやさしい母の姿が。
 理想と自分の抱える現実の間で、力なく揺れていました。



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