物語17 私情は私情で事情は事情だ 


 カイくんの勤務が、泊まり、明け、休みのリズムになりました。
 やった、平日休み、私の休みと合わせられる!
 と思いましたが、私情で私の休みは決められません。
 やっぱり、ほかのアルバイト、特に学生のシフトが優先。
 なんとかタイミングをはかって、午後からのデートが可能になりました。

 海そばのショッピングモールへ。
 ぷらぷらと店を歩いて見て。
 ナントカと煙の私は、またも展望タワーへ。
 今度は、カイくんは素直に喜んでくれました。
 腰がひけてません。
 慣れてきたかな?
 えらいぞ、カイくん。

 夜景がきれい、でした。
 ほぼ、カップルのお客さんばかりでした。
 ここぞとばかりにカイくんにひっついて、ガラス越しの夜景に見入っていました。
「ほら、きれいでしょ。」
「ここに来たことあるの?」
 少しの沈黙の後。
「うん。」
「そっか、あるよな。」
 まあ、私の行動半径は2、3年前と変わってませんから。

 帰り、車の中。
「大河さんと、連絡取ってるんだろ?」
 どういう流れか、私の元彼の話。
「うん。メールと、ときどき電話。」
「気にしなくていいからな。電話とかしてても。友達なんだろ。」
「うん。」
 なんて言ったらいいんでしょう、こういう時。
 弁解するのはおかしいし。
 親を頼るような気持ち、というんでしょうか。
 自分を良く知る人とはしゃべりやすい。
 実際、元彼は今の私のことを親よりもよく知っていると思います。
 世間話とか、仲間うちの、近況報告とかして、ひとりでもてあました時間にしゃべっていました。私はカイくんのことも話すし、向こうも自分の好きな人とか、彼女の話とか。
「カイくんは、大河に連絡しないの?」
 願わくば、友達でいてほしい。勝手な願望ですが。
「俺は、できないよ。言い方悪いけど、俺、あきちゃんを、その…寝取った男だろ。」
 否定はしませんけど。
 でも、でも、でも…という私の願い。
 昔、本当に仲良かった、二人。
 楽しかった。あの頃。
 戻れないのかな。
「大学のやつらとも、なんだか、ね。連絡しづらい。みんな知ってるからな。
 俺が、大河さんからあきちゃんをとったって。」
 とられちゃったんですか、私。物じゃありません。
「それは私の意志、だよ。カイくんが勝手にしたことじゃない。悪いのは私。
 友達関係に、それはひびかないって。
 ヒトの恋愛なんてね、当事者が思ってるほど、重要じゃないのよ。」
 経験則ですが。
「そうかな。」
「そうだよ。」
 よくある話じゃない。あの子とあの子がひっついて、あの子とあの子は別れた、って。
 私たちの恋愛も、そのうちの一つ。
 ちょっとさびしい気分だけど。
 でも、カイくんが私の最大重要事項。
 事情より私情を優先させてしまいたくなる存在なんです。
 休みのこともそう。
 いけないと思いつつ、カイくんと休みを合わせるために他のアルバイトにお願い。
 あんまりカンシンしないことですが、事情よりも私情。



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