ぴよアタマ 


 ふとカイくんの頭を見ると。

「あー、寝グセついてるぅ。」

 無遠慮ながきんちょあき。
 出てくるときに時間がなかったんでしょうか。
 短いカイくんの前髪が、半分だけあさっての方向へ立ち上がってます。
 整髪料もドライヤーも使わないカイくん。
 直すときは水、だそうです。
 水使ってる時間もなかったのね。

「ほんと? どこ?」

 無頓着なカイくん、鏡見てないのかしら。

「前髪だよ、ここ。」

 私が手を伸ばしてなでつけましたが、すぐに立ち上がってきます。
 じいっと見てると、なんかに見えてきました。
 短くて、ちょこんと立ってて。
 ひよこの尻尾だ。

「ひよこみたいだよー。
 ぴよぴよだ、前髪ぴよっ。」

「ひよこ?」

 私はこぶしを額にあてて、指をぱらっと開いて見せました。

「前髪、ぴよん。」

 カイくんが笑いました。
 おばかが調子に乗って繰り返し。

「ぴよぴよ。
 ひよこの尻尾。
 前髪ぴよん。」

 カイくんがまた笑いました。


 それからは寝グセのことは、ぴよ。
 奇怪な擬音が多いバカップルです。

 私も言われました。
 もともとクセ毛なので。

「あきちゃん、ここ、ぴよってしてる。」

 カイくんが自分の耳の辺りを指差しながらにっこり。
 私が自分の横髪を指で触ると。

「あ、ほんとだ、ぴよんだ。」

 くせっ毛がひとふさ、外側に向かってカールしていました。
 わしわし、と指でくしけずると、直る。カイくんのとちがって。
 でもしばらくすると、また。

「あきちゃん、ぴよだよ。」

 さすがに鏡を探して覗き込みました。
 直してみますが、おさまりません。

「もー、いいもーん。
 ぴよでいいですよーだ。」

 かいくんがくつくつと笑いました。


 カイくんは後ろアタマもぴよになります。
 完全なひよこの尻尾。
 ここまでかんぺきだと、かわいいの。
 車に乗ってたら、すかさず撫で回します。

「ひよこひよこ、ぴよぴよ、かわい。」

 思い出します。
 カイくんの短い髪の感触。
 また、触れられる日が来るかな、ねえ、カイくん。

 あと、思い出した。
 ぴよのルーツは、私の友だちだ。
 「友だちに「ぴよ毛」って、言われたー」
 って、カイくんにぶーたれたこと、あったよね。
 ひよことは言わなかったけど。
 きっと、あれが発祥だよ。
 あのとき、カイくんは「それがかわいい」って、言ってくれたっけ。

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