人は語ることで生きなおすらしいので 


 カイくんとの思い出、たくさんあります。

 少しづつ、ランダムに書いていこうと思います。
 ひとは、語ることでその人生や時間を生きなおすそうです。
 幸せな時間を繰り返し生きなおせるなら、この辛い日々も、少しは楽になるかな、と。


 クリスマスに、電飾のツリーを見に行きました。
 ヒカリモノ好きです。
 魚でも宝飾でもなくて。
 あたたかい光が暗闇に浮かび上がっていると、なんだかほっとするからかもしれません。
 人の手で作ったものだから、人工的、自然と逆、という見方もあるけれど、逆に人の気配があるから、惹かれてしまうんでしょうね。
 初めて行く場所だったので、車で着いてからも、どこどこ? と探し回りました。
 寒い屋外、カイくんと手をつないで。
 あんまり乗り気じゃないのは分かっていたけれど、どうしてもいっしょに見たかったから。
 思っていたよりも、小さかったけれど、美しさは倍以上。
 ぐるぐると周りを回って、あっちから、こっちからと、ゆったり眺めていました。
 カイくんも、うれしそうでほっとしました。
 感動してくれたみたいです。
 自分の趣味じゃないのにねえ。キャパが広い人。

 子ども連れやカップルが互いに記念撮影していました。
 そういえば、二人でいっしょに写った写真って、一枚もないです。
 どちらも写真に写るのが苦手だから。
 一枚くらい、残しておけばよかったな。


 帰り道、運転していたカイくんが道を間違えました。
 ありゃ、反対方向に来てしまった。
 軌道修正の間、だまりこくってます。

 あ、また。
 人ごみに連れて行ってしまった時といっしょ。

「怒ってる? ごめん。カイくん。」
 何度か、カイくんの不機嫌を経験した後でした。
 機嫌を損ねているのが言葉がなくても空気で分かりました。
 夜遅い運転で、疲れもあったと思います。
 反応が鈍い…
 こういう時って、どうしたらいいのかなぁ。
「カイくんとドライブ、好きだよ。カイくんの車に乗ってられて、私うれしいよ。」
 一生懸命なでまわしながら、優しく声かけ。
「うん…」
 とか、いちおうの反応はしてくれますが。
 表情が暗い。
 黙っておくことにしました。
 硬い空気。
 カイくんは、このとき何を考えていたんだろう。
 今となっては聞き出せませんが。
 私は、カイくんとのこれからのこういう時を考えていました。
 冗談でも言って和ませたほうがいいんだろうか。
 逆に、言い合いでも仕掛けて、けんかしたほうが、すっきりするのかな。
 怒っている人には、怒りが尽きるまで怒らせてしまうのがいいと思うんですが。
 カイくんは声を荒げて不満を言う人ではないので。そんな姿、見たことありません。
 私がしゃべり続けると、うっとうしいだろうし。
 沈黙。
 カイくんの横顔を見ながら、これからも、こういうことって、何度もあるんだよね。
 私、耐えられるよ、こんなこと、なんでもないよ、と、カイくんに向かって、念じていました。
 カイくんがいとおしかった。
 ほんとに、夫婦になったときのことを想像していました。
 なんか、良い対処法見つけよう。
 大丈夫、時間はいっぱいあるから。
 長く一緒にいたら、分かってくるから。

 着いてから、カイくんは私に
「ごめんな、長い時間。」
 とあやまりました。
 ほっとしました。
 私のほうはぜーんぜん気にしてません。
「ううん、連れてってくれて、ありがと。」
 カイくんこそ、疲れてたと思います。
 でも帰り着いたころには、いつものカイくんでした。
 ん〜好きだなあ。
 よくできた人だと思うな。
 機嫌損ねたら、何をやってもなかなか回復しない人っています。
 それを思えば、カイくん、良い人すぎでした。
 これからだって、押さえずに感情を表してくれていいんだよ。
 そのほうが、私うれしい。


 何枚かツリーの写真を撮っていました。
 ツリーを飾るぴかぴかの玉。
 その表面に、カイくんと私のシルエットが映っていました。
 大きいほうがカイくん、小さいほうが私。
 カイくんが、私の方向へ、ちょっと首を傾けています。
 手をつないだまま、写真撮ってたみたいです。
 仲良かったんだよね。カイくん。