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物語23 梅も桜も毎年咲くだろう 


 またもデートは私提案、カイくん運転。
 梅林で梅見です。

 二人の関係が、やっと、恋人のそれになってきたな、と思ったりして。
 これまで、私ばかりが、カイくんを心理的に追いかけていたような気が、していたので。
 なにこれ、貧富の差??とか。
 車があったら、自由にカイくんに会いに行けるのに。
 なのに、私は待つだけ。
 カイくんが来てくれる気になって、家の用事とやらがなくて、仕事に支障が出ない日に、カイくんが会ってくれるのを、待ちわびていました。
 休みの日数は、圧倒的に私のほうが少ないんですけど。
 カイくんが休みの日に、私が仕事だから、会えなくて淋しいと、言われたことがない。
 私はしょっちゅう言ってたのに。しつこいくらい。

 ここまできて、やっと、カイくんがうちにお泊りできるようになって。
 満たされました。心も体も。
 完全にのろけです。
 カイくんが泊まるときは、私の仕事終わりに、車でお迎え。
 深夜に一人歩きすることを考えたら、どれほどありがたいか。
 例のごとく、助手席からカイくんにぺたぺた触りながら、最近あったことを話して。
 そのままスーパーへ行って、晩ごはんと朝ごはんの買い物。
 または軽い外食。
 完全ワリカンを目指していたので、外食はたまにしかしませんでした。
 びんぼーだからって、ほどこしは受けないわ、と。
 対等でいたかったんです。仲がいいからこそ、守らなきゃいけないルールだと思います。
「これからも、ずうっとなんだから。付き合い長続きしたかったら、ちゃんとしよ。」
 と、おごろうとするカイくんに注意したことが。
 それでも、私が半額をだまって渡すと、毎回言ってました。
「出してくれてありがとう。」って。
 なんなんだろ、カイくんの思いやり、かな。
 それとも、男が出すもの、とかいう先入観から?

 家の近くの駐車場に車をとめて、うちへ。
 おかえりのちゅう。
 抱きつくと、私の頭のてっぺんが、カイくんの鎖骨のちょっと下。
 胸にほっぺたをくっつけてしがみつきます。
 たいがいカイくんは笑ってました。
 私があまりにも子どもっぽかったからでしょう。
 そうしている瞬間が、とても好きでした。
 あったかくて、安心して、1ついにぴったりと収まっている感じがしてて。

 なるべく手早く、晩ごはんの用意。
 カイくんは、最初、ものめずらしそうに見ているだけでした。
 家ではやっぱり、お母さんにまかせきりみたいです。
 カイくんちに遊びに行っても、カイくんが台所に立ったのを見たことがない。
「やり方教えて、これからちょっとずつ覚えていくから。」
 調理器具と調味料の置き場所にはじまって、包丁の使い方、野菜のあつかい。
 けっこう、興味を持ってくれたみたいで、凝り性だから、上達するかも、と期待。
 いろいろと二人で作業するのが楽しくなりました。
 合言葉は、「料理はテキトウ」
「食べられればいいんだ、食べられれば。」
 とかなんとかいいながら、できあがってごはんの時間。
 豪華ではないけど、健全な食卓でした。
 自分ひとりだと、もっと簡略化してしまうので、私の健康維持に良かったかも。
 カイくんトマトきらい。
 私、トマト大好き。
 カイくん、セロリ嫌い。
 私、セロリ大好き。
 というより、食べ物ならオールオッケイの私。
「好き嫌いするの、かっこわるーい。」
 と、からかって、カイくんをいじめました。
「そんなことないよ、食べれるよ。」
 と、食事の最後になってから野菜に手をつける。
 無理して食べてたのかなあ、カイくん。


 まったりしてると、カイくんはよくケイタイか、ハンディのゲームをしていました。
 カイくんのゲーム好きは理解してたので、やるなとは言えない。
 けっこうさびしいものですが、解消法が一つ。
 カイくんの背中にぴったりとくっつきます。
「カイくん」
 と呼ぶと、
 「は〜い、あきちゃん。」
 と、やわらかーく返してくれます。
 はたから見てる人がもしいたら、このバカップル、とあきれられると思いますが。
 徹底的に邪魔しにかかると、反撃されますが、普通の私の声にはやさしく対応してくれました。
 その辺が他のゲーマーとちがうのかも。
 没頭して無反応になることがなかったので、目の前でゲームをされても、気になりませんでした。

 ことあるごとに、「大好き」とか「愛してる」を口にしました。
 ベッドの中はもちろん。
 普通にしてるときも、電話でもメールでも。
 それはずうっと変わりませんでした。
 最初は過剰反応していたカイくんも、自然にさらっと自分から。
 欠かせないと思います。どんなに長い時間いっしょにいても。
 ずうっとカイくんといっしょにいるつもりでいました。いられるつもりでした。
 それでも、愛情表現に、手を抜いて、し足りなかったと思う部分は一つもありません。
 たとえこの先どんなに長い歳月があっても、一日、一日、すべてが貴重ですから。
 そう思っていました。




 梅の花が、ちょうど見ごろでした。
 ふたりで、あれが一番きれい、この花、変わってる、とか。
 この年はかなり暖冬で、ゆったりと見て回ることができました。。
「来年も、梅見たいな。」
 この願いは叶いました。
 桜も同じく、時期は遅くなりましたが、散る前に2度目の花見に行けました。
 来年も、再来年も、梅も桜も咲く。
 けれど、今年の桜は今年しか見れないし、いついっしょに行けなくなるか分からない。
 恵まれた現状にかまけて、後悔するような愛情のそそぎ方をしていては、もったいないです。
 愛することに、手を抜きたくない。
 この心がけを貫いて、ほんとによかったと思っています。